災害共済給付制度における保護者とは
災害共済給付制度(学校の保険/スポ振/スポーツ保険)の説明においてたびたび登場する「保護者」とはいったい誰を指すのでしょうか。
保護者は給付金の受給者であり、災害共済給付制度に加入するに当たって同意を得るべき対象となる者です。
この相手を間違えると大きな問題になります。
親御さん?父兄?保護者??誰でも保護者になれるのでしょうか。
様々な表現がありますが、きちんと法律の根拠があります。今回のお話は少々難しいお話になりますが、非常に大切なお話ですので、学校や保育所の設置者の方にはぜひ御理解いただきたいお話です。
平成30年4月現在の関係法令による保護者の定義を羅列しています。法律を読むのが苦手な方は破線部分は読み飛ばしてください。
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◆独立行政法人日本スポーツ振興センター法
第15条
7 学校の管理下における児童生徒等の災害(負傷、疾病、障害又は死亡をいう。以下同じ。)につき、当該児童生徒等の保護者(学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第十六条に規定する保護者をいい、同条に規定する保護者のない場合における里親(児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第二十七条第一項第三号の規定により委託を受けた里親をいう。)その他の政令で定める者を含む。以下同じ。)又は当該児童生徒等のうち生徒若しくは学生が成年に達している場合にあっては当該生徒若しくは学生その他政令で定める者に対し、災害共済給付(医療費、障害見舞金又は死亡見舞金の支給をいう。以下同じ。)を行うこと。
◆同法附則第8条
センターは、当分の間、第十五条及び附則第六条第一項に規定する業務のほか、次に掲げる施設の管理下における児童福祉法第四条第一項に規定する児童の災害につき、当該児童の保護者に対し、災害共済給付を行うことができる。
一 保育所(児童福祉法第三十九条第一項に規定する保育所をいう。次号において同じ。)
二 児童福祉法第五十九条第一項に規定する施設のうち同法第三十九条第一項に規定する業務を目的とする施設(次号の施設を除く。)であって、文部科学大臣及び厚生労働大臣の定めるところにより、その設備及び運営が保育所に係る基準に準ずるものとして文部科学大臣及び厚生労働大臣が定める基準に適合すると認められるもの
三 就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律第二条第六項に規定する認定こども園であって児童福祉法第五十九条第一項に規定する施設のうち同法第三十九条第一項に規定する業務を目的とするもの
四 児童福祉法第六条の三第九項に規定する家庭的保育事業、同条第十項に規定する小規模保育事業又は同条第十二項に規定する事業所内保育事業(次号において「特定保育事業」という。)を行う施設
五 児童福祉法第五十九条第一項に規定する施設のうち同法第六条の三第九項、第十項又は第十二項に規定する業務を目的とする施設(次号の施設を除く。)であって、文部科学大臣及び厚生労働大臣の定めるところにより、その設備及び運営が特定保育事業を行う施設に係る基準に準ずるものとして文部科学大臣及び厚生労働大臣が定める基準に適合すると認められるもの
六 子ども・子育て支援法(平成二十四年法律第六十五号)第五十九条の二第一項の規定による助成を受けている施設の設置者の当該助成に係る業務を目的とする施設のうち児童福祉法第六条の三第十二項に規定する業務を目的とするもの
2 第十六条及び第十七条の規定は、前項の災害共済給付について準用する。
3 センターが第一項に規定する業務を行う場合における第三十一条第一項及び第二項並びに第四十条第二号の規定の適用については、第三十一条第一項中「学校」とあるのは「附則第八条第一項各号に掲げる施設」と、同条第二項中「児童生徒等」とあるのは「附則第八条第一項に規定する児童」と、第四十条第二号中「第十五条」とあるのは「第十五条及び附則第八条第一項」とする。
◆学校教育法
第16条 保護者(子に対して親権を行う者(親権を行う者のないときは、未成年後見人)をいう。以下同じ。)は、次条に定めるところにより、子に九年の普通教育を受けさせる義務を負う。
◆児童福祉法
第6条 この法律で、保護者とは、第十九条の三、第五十七条の三第二項、第五十七条の三の三第二項及び第五十七条の四第二項を除き、親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護する者をいう。
◆就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律
第2条
11 この法律において「保護者」とは、児童福祉法第6条に規定する保護者をいう。
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上記のとおり保護者については独立行政法人日本スポーツ振興センター法の中で明確に定義されています。学校においては保護者とは学校教育法第16条に規定する保護者を指し、保育所や認定子ども園においては児童福祉法第6条に規定する保護者を指すのです。
学校教育法と児童福祉法では保護者の定義に違いがあります。
学校教育法ではまず保護者=親権者と明確に定義しており、「親権を行う者のないときは~」と親権者がいないときに初めて次の候補が示されます。まず親権者ありきの姿勢を明確に示しています。それに対して児童福祉法では、例外を除き、親権者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護する者と並列表記になっていますからもう少し幅広い解釈を可能としているように見えます。
問題は親権のない者が現に児童を監護している場合に現に監護をしている者を保護者とみなして良いかどうかという話になります。
児童福祉法上では、現に児童を監護していれば保護者と考える余地があるように思います。しかし、学校教育法上ではどうでしょうか。親権者が別にいるにも関わらず他の者を保護者として扱うことが果たして妥当でしょうか。
学校の設置者は保護者に対して制度の加入について同意を得る必要があり(独立行政法人日本スポーツ振興センター第16条)、上記のとおり保護者に対して給付を行う必要があります。
仮に学校教育法上の保護者(親権者)に対して十分な説明をしていない、同意を得ていない、災害があったときに親権者以外の人に給付をしているということが発生してしまえば上記法律の解釈と相反する可能性が出てくるのではないでしょうか。
子の連れ去りなどを起因として親権者ではない者が子を現に監護するようなケースが現に起きています。仮に親権者と学校やその設置者との間で争いが起きたときに、これらのことが法令で定められている以上、学校の設置者は「法律を知らなかった」「学校現場では家庭の事情を聞きづらいから仕方が無い」では済まないのです。法令遵守が大原則であることはいうまでもないことです。
学校教育法で定める保護者が親権者である以上、災害共済給付以外にも様々な学校に関する法令等において保護者とは親権者であると定義されることが多いかと思います。それらについても災害共済給付と同様に親権者に対して保護者として対応をしていく必要があるのではないでしょうか。
学校現場で法令違反となるようなことがないよう改めて十分な確認をしていただく必要があろうかと思いましたので今回はあえて法律を前面に出してお固い記事とさせていただきました。
なお、上記の法律の解釈については私の私見によるものです。
正確な解釈については、それぞれの顧問弁護士など専門家にお尋ねください。