災害共済給付について私が知っていることを皆さんと共有したい

障害見舞金とは

2018/09/08
 
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本サイトは、災害共済給付制度の理解を深めることを目的としています。災害共済給付とは、一般的には「学校の保険」「スポーツ保険」「スポ振」「安全会」などと呼ばれることが多いのですが、正確には「災害共済給付制度」といいます。学校(「保育園」「幼稚園」「認定こども園」などを含みます。以下同じ。)の設置者、学校の先生、学校の先生を目指す方、学校にお子様を通わせている保護者の方、様々な方がご覧になることを想定しています。ただ一点だけ御注意いただきたいことがあります。それは、本サイトが給付の可否を断定するものではないということです。本サイトの情報をもとに請求の手続きを進めていただけたらと願いますが、最終的な給付の可否については日本スポーツ振興センターの審査結果によります。給付ができないようなことももちろんあると思いますが、きちんと手続きを踏めば適正な給付を受けることができるものを1件でも多く救いたいと思います。

災害共済給付制度(スポ振/学校の保険/スポーツ保険/安全会)には障害見舞金というものがあります。
滅多に使われないものですが、それには理由があります。

まずはきちんと根拠法令から見て行きましょう。

独立行政法人日本スポーツ振興センター法施行令
第五条 災害共済給付に係る災害は、次に掲げるものとする。
一 児童生徒等の負傷でその原因である事由が学校の管理下において生じたもの。ただし、療養に要する費用が五千円以上のものに限る。
二 学校給食に起因する中毒その他児童生徒等の疾病でその原因である事由が学校の管理下において生じたもののうち、文部科学省令で定めるもの。ただし、療養に要する費用が五千円以上のものに限る。
三 第一号の負傷又は前号の疾病が治った場合において存する障害のうち、文部科学省令で定める程度のもの
四 児童生徒等の死亡でその原因である事由が学校の管理下において生じたもののうち、文部科学省令で定めるもの
五 前号に掲げるもののほか、これに準ずるものとして文部科学省令で定めるもの
2以下略

なるほど、まずは医療費の給付対象となったものについて、「治った場合において存する障害のうち、文部科学省令で定める程度のもの」とあります。
そもそも医療費の支給対象となるものでなくてはいけないのですね。
でもそれほど医療費の支給対象となるにはハードルは高くは無かったですよね。
(参考:給付の対象となる災害の範囲

そして独立行政法人日本スポーツ振興センター障害等級認定の基準に関する規程という規程があります。公式ページの少々深いところにありますので、関係法令のページについてリンクを貼っておきます。この中から見つけてください。

この中に「Ⅰ 障害等級認定に当たっての基本的事項」とあり、障害の意義が定義されています。ちょっと難しいですが、大切なところなので、ご紹介します。

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 1 障害の意義
 障害見舞金は、負傷又は疾病(以下「傷病」という。)がなおった場合に存する、当該傷病と相当因果関係を有し、かつ、将来においても回復が困難と見込まれる精神的又は身体的なき損状態(以下「障害」という。)であって、その存在が医学的に認められ、学校生活能力の喪失を伴うものを対象としているものである。
 なお、ここにいう「なおった場合」とは、傷病に対して行われる医学上一般に承認された治療方法(以下「療養」という。)をもってしても、その効果が期待し得ない状態(療養の終了)で、かつ、残存する症状が、自然的経過によって到達すると認められる最終の状態(症状の固定)に達したときをいう。
 したがって、障害の程度の評価は、原則として療養効果が期待し得ない状態となり、症状が固定したときに行うこととなる。ただし、療養効果が期待し得ない状態であっても、症状の固定に至るまでにかなりの期間を要すると見込まれるものもあるので、この場合は、医学上妥当と認められる期間を待って、障害の程度を評価することとし、症状の固定の見込みが6か月以内の期間において認められないものにあっては、療養の終了時において、将来固定すると認められる症状によって等級を認定する。

—————

はい、ちょっと難しいですよね。
何を言っているのか分かりにくいので説明いたします。
ここで語られていることは、障害見舞金とは、お怪我をしたことに対する見舞金ではなく、お怪我をした後に治療の限りを尽くしたけれども、残念ながら回復が困難な障害(能力の喪失)が残ってしまったことに対する見舞金であるということです。
学校の管理下でお子さんが怪我をすると、親の立場としてはつい以下のようなことを考えてしまいます。
「学校の管理体制はどうだったんだ。」
「けがをしてしまったことに対する見舞金じゃないのか」
「先生に責任があるからその損害賠償じゃないのか」
こう思ってしまいますが、本来そういう趣旨ではないようなのです。
災害共済給付制度では医療費の支給期間が最大10年間あります。
これは非常に長い期間であると言えると思います。医療保険等に御加入の方は御自身の加入されている医療保険の約款を確認してみてください。「10年にわたって医療費を支給します」なんて制度はきっとなかなかありません。
災害共済給付制度では、怪我をされたお子さんに対して見舞金を支払っておしまいという趣旨の制度ではありません。
子らの幸せは障害が残ったまま見舞金をもらうことではなく、またもとのように自由に健康に暮らすことです。
災害共済給付制度ではそれをサポートするため、当初の災害と因果関係が明らかであって、医療上必要であれば最大10年間の医療費の支給をするのです。制度の願いとしては最大の治療をもって、子らが健康な自分を取り戻すこと、quolity of lifeの向上を図ることではないでしょうか。
考えてみてください。お子さんがお怪我をしてそれが治らないまま、保護者に見舞金が支給されたとして、お子さんは幸せでしょうか。
できればほんの少しでも改善して元気になることが子にとって幸せであるはずです。
なので災害共済給付制度においては医療費の支給を優先し、治療の限りを尽くしたとしてもその効果が期待し得ない状態(療養の終了)で、かつ、残存する症状が、自然的経過によって到達すると認められる最終の状態(症状の固定)に達したときに初めて障害見舞金の請求を行うことができるように制度が設計されています。

どうしても子どもが怪我をしたばかりのときは保護者の方は色々な不安にさいなやまされるものです。
「このまま治らないんじゃないか」、「傷跡が残るんじゃないか」、「目が見えなくなるのでは」、「耳が聞こえなくなるのでは・・・?」
学校現場においては保護者様のそんな気持ちに寄り添うような対応ができるといいですよね。
「見舞金があるから大丈夫です」
ではなく、
「可能な限り完治を目指しましょう!」
という対応ができたら素敵ではないでしょうか。
保護者や児童生徒本人が納得できる治療を受けることも必要です。治療上必要であれば転院したとしても医療費の給付を受けるには支障がないはずです。
障害見舞金の請求を考える前にお子さんのためにできることを手遅れにならないうちに万全を尽くしましょう。

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本サイトは、災害共済給付制度の理解を深めることを目的としています。災害共済給付とは、一般的には「学校の保険」「スポーツ保険」「スポ振」「安全会」などと呼ばれることが多いのですが、正確には「災害共済給付制度」といいます。学校(「保育園」「幼稚園」「認定こども園」などを含みます。以下同じ。)の設置者、学校の先生、学校の先生を目指す方、学校にお子様を通わせている保護者の方、様々な方がご覧になることを想定しています。ただ一点だけ御注意いただきたいことがあります。それは、本サイトが給付の可否を断定するものではないということです。本サイトの情報をもとに請求の手続きを進めていただけたらと願いますが、最終的な給付の可否については日本スポーツ振興センターの審査結果によります。給付ができないようなことももちろんあると思いますが、きちんと手続きを踏めば適正な給付を受けることができるものを1件でも多く救いたいと思います。

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